劉慈欣「三体」は、続きが待ちきれなくなるほど面白かった!

  • 2019年10月25日
  • 2019年11月6日
  • 読書

この夏話題になった、中国の作家、劉慈欣さんによる長編SF小説「三体」を読みました。

SFに造詣の薄い私でも「これは面白い!」と思えた素晴らしい本だったので、自分でもレビューを書いてみました。

「三体」とはどんな本?

「三体」は中国の作家、劉慈欣さん著作の長編SF小説で、2019年7月4日に日本語での翻訳本が早川書房より発売されました。
「三体」「黒暗森林」「死神永生」の三部作構成になっており、「三体」は一作目にあたります。

つまり、うっかり続きが読みたくなっても、続きはまだ発売されていません(結構重要)

2100万部を超す売り上げを上げているというだけでも凄いのですが、2015年にはアジア人作家で初のヒューゴー賞を受賞しています。

日本訳本は「三体」だけで448ページある長編小説で、内容はかなりハードめなSF小説です。
物理学や宇宙系統の単語や知識がばんばん登場します。

私はSFに造詣が深い方ではありません。
SF小説は楽しんで読める方ではありますが、「星を継ぐもの」(内なる宇宙まで)と「幼年期の終り」くらいしか読んだことがありません。
生粋の文系で、物理学や宇宙に関する知識もかなり乏しいです。

それでも「面白い!」「早く続きが読みたい!」と思えたのが、この「三体」でした。

 

 

「三体」のざっくりとしたあらすじ

中国の文化大革命において、父である物理学者を失った女性科学者、葉文潔(イエ・ウェンジェ)は、巨大なパラボラアンテナが備えられた謎の軍事基地で働くこととなる。
人類の未来を左右する可能性をはらんだ極秘プロジェクトに携わる文潔は、ある日、宇宙からの電波を受信し、それに応えてしまう。
文潔の行動を契機として、異星から地球にのびる驚異とは?

文化大革命とは?

文化大革命とは、中国において1966年~1976年まで続いた、毛沢東主導による革命運動です。
資本主義文化を否定し、社会主義文化を根付かせようと、紅衛兵と呼ばれた学生運動を扇動して行われた革命運動で、多くの犠牲を生みました。

「三体」は、文化大革命のシーンから始まります。

あれ? SF小説じゃなかったの……?

読み始めの感想はそんな困惑からでした。
SFの知識もさることながら、文化大革命の知識もあまりなかったので、慣れない用語と、それを飾る文体に慣れるまで少し時間がかかりました。

 

「三体」読了後の感想

文化大革命の出だしはかなり苦戦したものの、物語が動き出してからはするすると読みすすめることが出来ました。
文化大革命の下りはそう長くはなく、葉文潔の物語が続き、もうひとりの重要人物、汪淼(ワン・ミャオ)が登場してから、お話が大きく動いていきます。

「三体」とは何なのか?

汪淼の登場から先、SF色がぐっと濃くなっていき、中盤以降は量子、陽子などの物理学用語も多く出てきます。

この量子、陽子は結構物語に深く関わってくるので、後半かなりよくわからないまま読んだ部分もあります。
正直、かなりハードなSF小説だと思います。

それでも、わからない部分がありながらも、物語の展開が素晴らしく、夢中になりました。
ある程度の用語部分はざざっと流してしまっても、十分楽しめるお話ではないかなと個人的には思いました。

当然ながら登場人物は中国人が多いため、漢字名の登場人物が大変多いです。
名前を覚えるのに一苦労しました。
漢字ではなく、カタカナ読みの方で名前を覚えたほうが読みやすいかもしれないな、と個人的には思います。

 

以下、ネタバレ感想になります。未読の方はご注意ください。
(ネタバレ防止で、灰色文字にしています。反転で読むことが出来ます。+ボタンを押すと感想が開きます)

 

ネタバレ感想
ざっくりとしたネタバレあらすじです。

文化大革命で父を処刑された葉文潔は、紅岸基地と呼ばれる、異星人を探すことを目的とした軍事施設に所属します。
ある時、地球から約4光年離れた惑星に地球からの電波が届き、惑星からは「電波を送ってくるな」と返信の電波が送られてきます。この電波を葉文潔が受信し、人類に絶望していた葉文潔は「地球に来て欲しい」と電波を返信してしまうのです。
そのはるか遠い惑星は、三つの太陽が存在する過酷な世界で、この太陽の巡り方に寄って、安定した時代「恒期」と、生き物が住めないほどの過酷な環境へと惑星を変貌させる「乱期」を交互に繰り返していました。三体文明は恒期に文明を花開かせ、乱期に滅亡すると言う状態を長い年月繰り返してきたのです。
地球からの電波を受信した三体人は、三体世界が過酷な惑星での運命から脱却すべく地球を侵略することを予測し、地球へと警告のために「電波を送ってくるな」と電波を送ったものの、葉文潔は逆に三体世界の侵略を望んで電波を送り返してしまうのです。
一方その頃、地球では多くの物理学者が次々と謎の自殺を遂げていました。
ナノマテリアル科学者の汪淼は、自分にしか見えない謎のカウントダウン現象に悩まされていました。その解決方法を探し求め、カウントダウンを止める方法は、ナノマテリアル研究を中止すること、もしそうしない場合は、汪淼も死ぬことになると判明したのです。
これは三体世界が、地球の科学技術進歩を遅らせるための策略でした。地球への侵略を開始したものの、三体世界から地球までは400年以上掛かるため、その間に地球の科学力が三体世界を上回ることがないよう、二つの陽子からなる「智子」と呼ばれるものを地球に送り込みました。それが汪淼を襲った謎のカウントダウン現象を引き起こしていたのです。
三体世界の侵略は、葉文潔の思想に共鳴した地球人の間では密やかに広がり、地球三体組織という組織が結成されていました。汪淼はこの組織に潜り込み、三体世界を識るためのVRゲーム「三体」をプレイしながら組織内部深くへと関与していき、ついに三体世界が世界に公に公表される事となり、地球人は異星人への対策を練る必要に迫られていく。

物凄くざっくりなので、違っている部分があったら申し訳ないです。自分の理解不足。

 

出だしの文化大革命部分ははたして必要なのか?と思いながら読み進めていたのですが、葉文潔が人類に絶望するまでの思考の流れとしてはやはり必要だったのかなと思いました。
ただ、「少女の小さな姿は(略)銃の弾丸を呼び寄せた」というような装飾的な文体が、文化大革命用語を理解しながらでは少し思考の妨げになりました。ただ、この印象は最初の数ページだけで、あとは結構淡々とした文体で話が進んでいきます。逆に、何故最初の数ページだけこんな回りくどいの?と首を傾げてしまいました。

葉文潔が三体人を地球に呼び込もうとした理由。わからなくもないのですよね。
温暖化や異常気象、いつまでもなくならない戦争など、現代社会にたくさん存在する不安要素が解決することはあるのか?
人間の一生では終わらない長い時間を掛ければ解決するかもしれません。あるいは全てを劇的に変えていけるような国や人の結びつきができれば。でも私でもそれは奇跡に等しい状態ではないかと思うのですよね。時間を掛けたら良くなるかもしれないものでも、そこまで待っていられる時間が地球に残されているのか。これは誰にもわかりません。
ならばいっそ、異星人にすべてぶち壊してもらったほうが救われるのでは。
人類に絶望しているわけではない私でも、ちょっとは頷けてしまうのです。

とは言え、そこで諦めてしまったら、お話が終わってしまうので。

汪淼が挑むVRゲーム「三体」がまた面白いのです。
三体世界を襲い来る「乱期」が、本当に色々なパターンで登場します。ある時は世界が燃え尽き、ある時は凍り付き。三体世界が本当にあっさりと滅んでいく様は、本当にゲーム世界のようです。
三体人の面白いところは「脱水」することで、乱期を乗り越えることが出来るというところでしょうか。
脱水とは文字通り、三体人の体を脱水して、その体を保存することが出来るようになるというもの。ぺらぺら。生命の在り処を思わずにはいられない画期的な生存手段です。とは言え、きちんと保存しておかないと駄目なようで、乱期で世界が炎に包まれた時などに良い場所で脱水出来なければ、そのまま脱水した身体も燃え尽きて死んでしまうとか。
正直、そんな状態で生き延びられるなら、世界が何度滅亡しようと平気なのでは? と思わなくもないですが。まあ、文明が発展してもすぐ滅亡してしまうようでは、未来はないのでしょうか? 高次な文明でなければならない理由があまり私には見出だせないので、アトランティス文明やアステカ文明のように幾らでも隆盛して滅べばよいのでは、と思ってしまいますが。

とは言え、それではまた、お話が終わってしまうので(二度目)

地球への侵略を開始した三体人が、地球の科学文明を衰退させるために編み出した「智子」
お話の終盤に出てくるこの「智子」ですが、正直この辺りから、量子や陽子のお話がばんばん出てきて、詳しくない私にはまったくわからなくなります。
陽子を二次元に展開してうんぬん、11次元がうんぬん……「智子」って結局どういう状態?? というところは、正直いって、今でもほとんど理解できていません。

「三体人は『智子』って名前の凄いものを編み出したぞ! 侵略するための宇宙船が地球に到達するまでに、その智子を地球に送り込んで、地球の科学文明を衰退させるぞ!」

取り敢えずこの流れだけわかっておけば、まあお話はわからなくもないです。
友人に智子さんが居るせいで、ともこと読んでしまうのが難点。いや、私だけか。

いずれにせよ、異星人の惑星=三体世界であること、三体人はすでに地球への侵略を開始していること、地球三体組織だけが知っていたその事実が公になり、地球側が対策を考える必要を認識したこと。

ここで第一部が終わります。

面白いところで!!

嘆いても、三部作なので、全話読了はだいぶ先になるでしょうね。がっくし。

どうしても続きが気になる人は、英語版などは既に発売されているので、そちらにチャレンジしてみるのも手です。

 

とにかく続きが気になる三体三部作。
日本語訳の続きが発売されたら、即買うと思います。それほど面白かったです。

少しむずかしい部分もありますが、SFのわくわくどきどきはたっぷり味わえると思いますので、未読の方は是非!

 

途中で紹介したSF小説はこちら

SF小説としてはとても有名な二冊だと思います。

どちらもSFに造詣の薄い私でも大変楽しめたので、是非読んでみてください。